旅立ちの日

ぐらり、と大きく揺らぐと、重みに耐えかねていきなりこけそうになった。
出発当日の早朝、実家の前での自転車の試運転。
前日の夜にようやく自転車に装備一式を取り付けて、
日の出とともに勢いよく出発する「はず」だったその第一歩は、さっそく転倒寸前だった。

気を取り直してゆっくりと乗ってみる。
重みは感じるものの、走り出せば案外重さは気にせず走れることがわかってきた。
空は快晴、出発の時だ。
「無事に帰ってきます。」
親にそう言い残して、再び自転車にまたがった。

旅をするにあたり、自転車本体だけでなく、キャリアーや前後のバッグ、飲料水ボトルに至るまですべて新調した。
そんな真新しい自転車にまたがって長い旅に立つというのは、解放感があっていい。
朝日がまぶしいくらいの青空のもと、外国へ旅立つべくペダルを踏み込む。
一人ニヤつくのを止められない。
なんて気分がいいのだろう。
とりあえずの目標は、約480km先の成田空港だ。
慣れない自転車でいきなりロングランである。
最初のうちは信号で止まるたびふらつき、肝を冷やした。
10km達成するごとに「10km無事に走れたことに感謝」と勝手に何かにお礼を言っていたものだった。
後になって考えると初々しい話だが、成田までにつまずくわけにはいかないとそれだけ真剣だったのだ。

長距離移動もテント野宿もほとんど初めてだったが、
運動公園の片隅や海岸線の防風林の下なんかにテントを張って、無事に4泊5日の行程を終えた。
空港まで送っておいた自転車用ダンボールを受け取り、パッキングをする。
大きなダンボールに自転車をなんとか詰め込んで、チェックインカウンターに向かった。

さぁ、いよいよはじまるのだ。
海外・自転車一人旅。何が起きるか、そして何が起こせるか。
精一杯楽しんで、ペダルを漕いでいこう――。

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