旅と登山と水

お盆の休みを利用して、北アルプスを歩いた。
槍ヶ岳(3180M)・北穂高岳(3106M)・笠ヶ岳(2897M)という、登山愛好家ならその名を聞いただけで目を細めるような山々を、テントで野営をしながら4日間歩きとおした。この記事を書く今、すでに”下界”に降りて一週間も経つけど、いまだに体の中にその時もらった幸福感の残り香が充満している。晴天に恵まれ、何もかもがうまくいった、とびきり贅沢な登山だった。

さて、細かいデータは後日まとめるとして、ここでは一つエピソードを紹介したい。

今回はのっけから急登だった。
一日目の山・笠ヶ岳への道のりは想像以上にハードで、山の中腹ですでにクタクタ、水筒もカラカラという有様。登れば登るほど太陽光は強くなり、のどが渇いてくる。山の上に水道なんてあるはずもないが、半ば憑かれたように「冷たい水が腹いっぱい飲みたい・・!!」と念じていた。
奇跡は、もうすぐ水筒も底をつくという頃に起きた。まるで手品師のマジックのように、ほんとに冷たい水の小川が目の前に現れたのだ。頂上付近にいまだに残る雪渓が、地図上にない小川を作り出してくれていたのだ。

キンキンに冷えた天然水を心ゆくまで飲む。天を仰ぎ、稜線を吹き抜ける風を思いっきり吸い込むと、アルプスの水が体中に染み渡ってゆくのをはっきりと感じた。
するとふと、「あぁ、自分は今、北アルプスにいるのだなぁ」と心地よい気持ちも湧き上がってきた。雪解け水という自然の粋な計らいを受け取ることで、自分と山々がどこかでつながったように思えるのだった。

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アルプスの縦走では、水は道中で補給しながら歩くことになる。
小川の水、雪渓から溶け出す水、山小屋が蓄えてくれた天水(雨水)・・今飲んでいる水の源が目の前にあるというのは大切なことだ。その恵みをいただいて次の一歩を踏み出す。次の食事を作り、また次の半日を生きのびる。貴重な自然の財産をいただいている、というごく当たり前の事実が、アルプスでは顕著に迫ってくる。

僕は旅や登山をするうえで、いつも必ず気にかけていることがある。
それは「その土地と繋がりたければ、その土地の水を飲むこと」
そうすることで自分の属していた世界からまとってきた衣を脱ぎすて、新たな土地の”あるがまま”を全身で受けいれる覚悟ができる、と信じて疑わない。僕はこの行動を、長旅や山歩きの際に、必ず儀式のように意識して行っている。そしてアルプスでは誰もが(必要に迫られて)天然水を口にし、山と自分を”接続”する。僕はこの事実がとても好きだ。

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アルプス3000M、岩肌だらけの稜線上。
いま僕よりも上にあるのは空だけだ、..そう見上げた青空に、宝石のような美さのアサギマダラ(ちょうちょ)が舞っていた。目の前の奇跡に目を奪われつつも、一匹の蝶の、あまりに高い峠越えを見守った瞬間があった。

頂上直下に張ったテントの夜。
偶然にも流星群の通過するというその夜に外に寝転がって夜空を見上げると、はっきりと見える天の川に並んで、長い長い流星が流れてゆく瞬間があった。

・・北アルプスと繋がるということ。
それはきっと、日本にいながらにできる最高の旅の一つに違いない。

カテゴリー: 2012~ 日本 パーマリンク

6 Responses to 旅と登山と水

  1. Jon のコメント:

    まだ、ドミトリーで暮らしてるんですか?

  2. Jon のコメント:

    まだ、ニュージーランドに移住したいのですか?

  3. ちるじろう のコメント:

    jonさん
    いまはドミトリーではなく普通に一人暮らししてますよ。
    それでも東京の最初の1年半はずっとコインシャワーでしたけどね笑

    あと、NZ移住の話はだんだん具体的になってきましたよ。来年には渡航できると思います。

  4. JON のコメント:

    流石です。

  5. JON のコメント:

    NZの大学院いくんですか?

  6. JON のコメント:

    円安だけど行くんですか?

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