実に久しぶりにスタバに入ってカプチーノとマフィンを注文し、旅のときから使い続けているノートパソコンを机の上に置いて電源を入れている。
快晴だけど風が荒れ狂う日曜日、おかげで出場予定だったマラソン大会は中止になってしまった。おかげでこうして一ヵ月ぶりにブログを書くこともできるのだけど。(遅れてスミマセン;<)
実は一つだけここに書いておきたいことがあってスタバにきている。
NZ永住を考えるようになり、自分のこれからとるべき道もある程度定まった今、「自分はどういう仕事が向いているんだろう」とか「本当にしたいことって何だろう?」とか、人生に対する漠然とした不安を抱くことが以前と比べてとても少なくなった、と思う。もちろん、それはある程度道を決めたからだ、とみることもできる。けれど僕としては、AUSの旅を経て今後の人生に対する見方がずいぶんと変わったことも大きな理由の一つだ、そう考えてもいいと思っている。今回は、そんな話。
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自転車旅の最初の1年、とくにスタート地点のシドニーからキャンベラ、タスマニアへ至る大陸南下の道中は、実をいうとずっとずっと思考的には暗い暗い海の底にいた。サドルの上にまたがり、やることと言えばペダリングだけという日中のその持て余した時間に思うことと言えば、「俺はいったい何をしているのだ?」「俺はこの先何がしたいんだ?」という砂漠のようにだだっ広く茫漠としたこの先に対する不安でしかなかった。ほかのことなど何も考えていない。何も考えられなかったと言ってもいい。
――”この旅を経て、俺はナニモノになろうとしているのだ”
この問いから、ずいぶん長い間逃れることができなかった。
ところがこの出口のない自問自答とは無関係に、自転車旅はその資金をまったく失い(苦笑)、どうしようもなく自転車を置いて働く期間が増えることになる。資金を集めるためにいろんなことをしたと思う。合計7個所の農場で収穫や剪定、あるときは食肉加工工場で働き、またあるときはシティーに出てレストランで働いた。AUS各地を回っていろんな人の生き方を見て、自転車旅を通して世界各国たくさんの人の親切をこの身にうけた。
海外で、独り生き残るかどうかの崖っぷちに立ち、必要とされることをとにかく一生懸命にこなしていく。”ナニモノに・・”という問いはいつの間にかその崖から転げ落ち、しかし自転車はそのすれすれをなんとか渡り切った。
自分には何が向いていて、何が向いていない
どんな道がよさそうで、どんな道が選ぶべきでない
どんな才能があって、どんな才能がない・・
そんなかつて思い悩んだ問いは少しずつ色あせていく。
見えない問いを追い求めることに何日も何年もついやすよりも、どんなことでも目の前のことをこなせるようになることに注意を注いだ方がよほど人生には有益だと、すべての体験はそう教えてくれた。
僕らの目の前のショーケースにはこれでもかと甘いものが並んでいる。
そしてあれがいい、これがいいと思ううちに決まって選択を間違える。
僕らは選択肢を間違える。
間違えた選択肢をビニル袋に入れてショーケースを離れる。
そしてどうしてこれを選んでしまったのか・あれを選べばよかったんだと思い悩む。
でもその時に、手にしたその選択肢の使い道を考えてみてはどうだろう。
――たまには違うものを食べてみるチャンスかもしれない
――隣人に分けてあげたら喜ばれるかもしれない
そうして、いつか再びショーケースを前にしたその時はきっと、棚の隣にあった選びたかったものを試してみればいい――、そうちょっとだけ思ってみる・・。
そしたら、何事も楽しくやっていけるんじゃないか?
そんな風に、今少し思ったりする。
・・とまぁ、ある方にある質問をされて、この記事はその返事みたいなものです。どうでしょうね?