4頭のイルカ

そういえば、ナラボー平原でエミューと自転車で並走したことがあった。
道端の茂みの間にいたつがいのエミュー、
彼らは突然の自転車に慌てふためいてパニックをおこし
なぜだか同じ進行方向に走り出したのだ。
「やった、エミューと並走してる!!」
・・・と思ったのは、しかしほんの数秒。
エミュー夫妻は気を取り直して、90度直角に曲がって茂みの中にサッと姿を消したのだった。

****

そんな出来事を、そのとき思い返していた。
目の前には4頭のイルカ。
僕はのんびり自転車に乗って、浅瀬を泳ぐかれらと並んで走っていた。

仕事帰りの河口沿いのサイクリング専用道路。
街の中心部まであと5分という、大都市パースの目の前の海でイルカに出会った。
岸に沿って泳ぐ彼らにくっついて自転車を走らせる。
時速は10キロもでていない。

彼らはひくい電子音のような音を奏で、同じ場所をいったりきたりした。
何してんの?、と海を覗き込むと、20㎝くらいの小さな魚を、大の(?)イルカが4頭そろって追いかけっこしているのだった。
イルカに咥えられ、放たれ、また咥えられては逃げるその魚を気の毒そうに眺める。
するとふと、そいつと目が合ってしまった(と思う)。
「命だけは…!!」。 
弱々しく、しかし必死のギョうそうで泳ぐそいつは、あぶくを吹きながらそんなことを言っていた気がする。

*****

イルカのすぐあとをペリカンが追いかけていく。
きっとあのペリカンは、イルカが遊び残した小魚を狙っているんだろう。
イルカと別れて街にむけて自転車を漕ぎだすと、
たくさんの鵜が岸辺で羽を広げて日光浴をしているのが見えてくる。
自転車で1mまで寄っても逃げない。知らんふりしてぼーっとしているのだ。

どうも、ここパースの海沿いのサイクリング道路は、
野生と街との境界があやふやだ。
緊張感がないというか・・どこまでも平和というか。
境界というよりバファー・ゾーンなのかもしれない。
なんにせよ、不思議な空間には違いない。

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