7月―
登山バスが開通し、いよいよシーズンが幕をあけた。
高山植物が咲きはじめると早くも登山シーズンはピークを迎える。
休日には小屋もテント場も、足の踏み場もないほどの人出で賑わい、
150人収容の山小屋に、テント組も含めて最大で500人も泊った日さえあった。
収容人数をはるかに超えた宿泊客を受け入れる――
山小屋アルバイトとして、これほど大変な日はない。
朝は3時台に起きて、夜は20時まで接客と食事準備の嵐。
しかし、そんな小屋の喧騒をよそに、残雪も少なくなった7月の北岳は、静かに彩りゆたかな衣装を身にまとい始める。希少な植物が豊富に咲くことから、”高山植物の宝庫”とも言われる北岳。
標高3000mの雲の上に広がるお花畑――それは”楽園”そのものだった。