食肉工場で働く2012

※旧ブログ「MANUKA」から加筆修正&転載というかたちで、
山小屋アルバイトのころ(2010年)の記事をUPしました。
右側「カテゴリ」→「山小屋アルバイト」からどうぞ。

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偶然が重なって、いまだエスぺランスという町にいる。

命からがら逃げ込んだ安宿で、この町で仕事をしているという日本人の旅人に偶然会い、
「仕事の空きがあるかボスに聞いてあげるよ」
とボスに掛け合ってくれたその翌日から仕事を得て働くことになった。
・・まったく、何がどう繋がっていくかなんてわからないもんだ。

体調さえよければ一日で通過したはずの小さな町で一ヵ月も滞在して、
月-金の8時間労働というリーマンのような規則正しい生活をしている。
つくづく、旅というのは不思議なものだと思う。

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その仕事というのは「食肉処理場(英語でabbattoir)」作業員。
オーストラリアで初めての工場での仕事だ。

仕事をしていると、「いのちのたべかた」という映画が思い浮かんでくる。
食肉処理場のベルトコンベアーに牛が運ばれてくるとスタンガンのようなもので気絶させられ、内臓をとられ、各部位に切り落とされ・・なんもかもが全自動で「生き物」が「食材」へとかわってゆく、その不気味なシーンがありありと思い浮かぶ。

いまの職場も、家畜たちが工場内に運ばれてきては、全自動ではないにせよ、作業員の手によって解体され、段ボールの山となってトラックに積まれて工場をでてゆく。
工場内には大音量で流行りのポップ・ミュージックが垂れながれ、
清潔で明るい室内はまるでショッピング・センターのような雰囲気だ。

ぼくらは毎日の食事で動物を”いただいている”…。
こんなこと当たり前すぎる事実なのだけど、
音楽ガンガンの中で八つ当たりのようにナイフをふるい肉を切り出すという、
感謝もへったくれもない現場をみてしまうと、
何かとらえきれない不安が心の片隅にたまってしまう。
食材っていうのは、そんなに簡単に得ていいもんだろうか..?

NZやオーストラリアで、羊や牛が牧草地で草をはむ姿をよく見かけたもんだ。それは緑と太陽あふれる穏やかな景色だ。
でも、食肉処理場の吊るされた動物たちが脳裏に焼き付いた今、そんな景色もただ無邪気に感動することはもうできないのかもしれない。

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うっかり長居しているエスぺランス。
ここは自分にとって、いろいろな意味で今後に大きなな影響を残しそうな経験をくれる町になりそうだ。

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2 Responses to 食肉工場で働く2012

  1. Takeshi のコメント:

    前々々回?コメントの返信ありがとうございました。喘息辛いですよね。今は落ち着いたことを願います。
    あと前回の話とても感動しました。旅人にとって進むも止まるも戻るも全部勇気だと思います。本当にそう思います。でもその人が何かを感じて行動したことは全部「進む」だと信じてます。「あー、このブログに出会えて良かった」って心から思います。今後も更新読まさせて頂きます(^-^)
    僕は今はクアラルンプールです、これから北に向かいます。

    • chirujirou のコメント:

      takeshiさん
      コメントありがとうございます、
      喘息は忘れたころにくるのでやっかいです@
      体調はもう大丈夫です、来週にもチャリ旅再開の予定でいます。

      そうですよね、旅をしていると、一つ一つの選択がその先の出会いを変えて、得るものを変えて、それが積み重なれば人生だって変ってゆく・ そう考えると道ひとつ選ぶにもとても勇気がいるもんですよね。でもそれは正解不正解の枠を超えて、全部「進む」性質のもの。。 僕は早々と自転車を降りてしまいそうですが、これも、より前へ進むために道を一つ選んだにすぎません。あとはこの道を信じるのみです^^

      KLにいらっしゃるんですね~!メインストリートはブキット・ビンタンでしたっけ、中華街が活気があったのを思い出します。次はペナンでしょうか、マレーシア、楽しんでくださいね~!

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