エスぺランス、出発のとき

シェアハウスの裏庭の、こじんまりとした芝生にイスを出して外を眺めながら、この記事を書いている。誰かの部屋からギターを練習する音が流れ、別の部屋からは母国語で電話をする男の声がきこえてくる。雨がちで、そして平和な土曜日だ。

明日、人口1万5千人たらずの小さな町エスぺランスを発ち、
自転車旅のゴールとなるパースへ向かうことにした。

留まる気などまるでなかったこの町で、本当にいろいろな出来ごとがあった。

ナラボー平原の乾燥にやられた右目の療養が長引き、
テントで風邪をひいて喘息を併発し、
死を目前に自分のするべきことを考えて、
自転車を降りて別の夢を追いかける決意をした。

偶然の出会いから仕事もえた。
住まいも安宿からシェアハウス(一軒家)に移って、
まるでサラリーマンのような、つかの間の安定した生活をおくった。

これらすべての出来ごとは自分の手の届かないことろで起こり
その有無を言わさぬ洪水に押し流されて
「自転車での世界旅」という川の流れから、
あっという間に別の支流に入ってしまった・・
そんな気もするけれど、不思議と後悔のようなものはない。

洪水の後に手元に残ったもの。
それは
「イチバンやりたいことを最優先で最大限にやってゆこう」
という、前向きな気持ちだけだ。

もう、この気持ちは絶対に揺るがない。
死にかけたテントの夜、自分の呼吸が止まってテントの入り口に倒れこむ自分の姿がはっきりと見えたものだ。オレンジのTシャツを着た人間がうつぶせに倒れるその現実に極めて近いマボロシを・・今でも鮮明に思い出せる。明日はもう自分はこの世にいないかもしれない、

――明日をもし生きられたなら・・今の俺は何をするべきなのか

その時の感情を思い返すと、3週間もたった今でさえ涙がでてくる。

・・さて、さむくなってきた。
これを書いているうちにいつの間にか太陽も沈んでしまったみたいだ。もう中に入ろう。

さぁ、明日から約2週間のAUS最後の自転車旅。
パースまで、海岸沿いに走って約1200キロだ。
後悔ないよう楽しんで走りたい。

カテゴリー: 5.パース編 パーマリンク

5 Responses to エスぺランス、出発のとき

  1. yoko のコメント:

    good good good luck♪
    私も後悔のないようにフレキシブルに行動する^^/

    • walter のコメント:

      洋子さま、すごく会いたい!

    • chirujirou のコメント:

      ありがとう!
      お互い後悔のないように!!

      そしてワン君、人のブログでなんぱはやめようね笑

  2. walter のコメント:

    すげぇ!また走ってるんだ!まじ羨ましいよ。ねぇねぇ、わしの所へ来ないの

    • chirujirou のコメント:

      ワン君
      まだ走ってるよ~!
      でもそろそろ終わりかなぁ。

      中国も自転車で走ろうと思ってたんだけど、ちょっと予定変更でだーいーぶー先になりそうだよ笑 でも「サイクリングin Asia」はいつか絶対やりたいから、それまで待っててよ笑!

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