ジョギングで大陸横断の男と出会う ――ナラボー平原

ここナラボーは今まで通ってきたルートとはかなり様子が違う。

ロード・トレインという名の2-3両編成のトラックが巨体を揺らして制限速度の110キロで自転車の真横を突き抜けてゆき、立ち寄った小さな集落はメインストリートさえ未舗装で風がうなるたびに砂塵が舞い、休憩する場所さえ見つからない。
そして、走っても走っても、360℃の荒野から逃れられない。
景色は変化することを忘れ、地平線を超えてもまたそのかなた先に別の地平線が横たわっている。

――そんな荒々しく漠然とした大地を自転車ですすんでいる。
この無力感はどうだ。こんなに周りに圧倒されるサイクリングがほかにあるだろうか。

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そんなナラボーでマラソンをしている男に出会った。
パッチというその黒人の若者は、なんとジョギングでパースからシドニーに行くのだという。まるで風間寛平のアースマラソンのようにサポートカーとサポーターを雇い、本格的な長距離ランだ。HPに載せるからと言って自分と一緒にビデオを撮ったが、その時の彼の言葉がよかった。
「俺たちはこうやって夢を追ってんだ、誰にも止められないぜ。」
なかなかイキなやつである。

別れぎわにサポートカーの男から冷えた缶コーラをもらった。
旅中は冷えた飲みものとまるで縁がないから、こういう差し入れは本当にありがたい。
目の前の小さな坂を上りきると、眼前にハイウェイが一直線に伸びていた。漕ぎながらそのコーラを乾いたのどに流し込む。夕日が進行方向に輝き、すべてが金色に染まりつつある。思わず叫んでいた。
「うめぇーー!!」
これは日本語と相場が決まっている。

It made my day、シンプルなサイクリング・ライフでは、たった一人との出会いと冷えたコーラだけで一日が満たされる。たまには、こんな日があっていい。

さて、明日から1200キロの無補給エリア。その間に町がありません。
しばらく更新とまりそうです。それでは、また。

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