旅の危険と、オージーのやさしさ

自転車旅というのは不思議なものだとつくづく思う。
どれだけ装備をととのえて、どれだけ安全に気をつけていても
「身の危険を感じるほどの状況」にすっぽりと、それはもう簡単すぎるほど簡単に落ちてしまう。

今日もそうだった。
それはいくらなんでも急すぎた。

今日の午前は大雨。
午後も雨が続き、そのうち風がでてきた。
ちょっと風が強くなってきたなぁ、そう思い始めてから10分もなかったはずだ。
強風は、瞬く間に猛烈な突風になった。
道沿いのユーカリが一目見て危ないと直感するようなしなり方をし、
飛んできた小枝がヘルメットやサングラスにカンカンと当たりだす。
腕よりずっと太い枝が自転車のすぐ横に落ちて砕け散ると、思わず自転車を放り出してすぐそばの大きな木の陰にしゃがみ込んだ。

あとでネットで確認したところによれば、最大瞬間風速43キロ。
地響きのように唸る風を、大木にしがみつくようにしてただただ眺めていた。その大木すら地面ごと揺れている。
その時の怖さ、心細さ・・自然は時としてこんなにも怖いものかと腹の底から想ったものだ。

突風が収まらないので、無理を承知で走りだし
15キロ先にあったキャラバンパーク(有料キャンプ場)に逃げ込んだ。
このキャラパも壮絶だった。
入り口の20m近い大木は根こそぎ倒れ、
レセプションの男は顔から血を流し(飛んできた枝にあたった)、
全域停電のため電気もシャワーも使えないという。(その代り個室を安くしてもらったが)

明後日にはパースについてこの自転車旅の区切りが付くというのに・・
AUSは最後まで何かイベントを準備してくれる。

*****

余談だけど
自転車を放り出し道端の木陰に隠れている間、
実に10台近い車が停車し(彼らだって倒木の危険の中にいるのに)
「大丈夫か、乗せようか」と真剣な眼差しで声をかけてくれた。

山火事や洪水などたくさんの自然災害をもつオージー。
過酷な自然の中でみせる、かれらの身を挺するような献身的なふるまいには敬意を抱かずにはいられない。

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