アップルの間引きをしています

4月以来、実に7か月ぶりにタスマニア南部のアップルファームにやってきた。
以前ピッキングジョブをした所と同じTimという男の経営するファームで、
今度はThinning(間引き)を短期間やらせてもらえることになったのだ。
(チェリーピッキングが始まるまでの短期滞在。。のつもり)

Timは自分のことをよく覚えていてくれた。
再開の挨拶を交わしたあとで、
「この男はよく働くイイやつだ」
そう隣の同僚に説明していたのがうれしかった。

今日まで一週間働いてみて、噂に聞いていた通り稼ぎは少ないけれど(苦笑)
各国からの旅人との新しい出会いもあるし、
何より思い出の場所で再び働けるというのは、決して悪いもんじゃない。

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それにしても、アップルの間引きは面白い。
間引き前の木には、まだ梅~トマトくらいの大きさの若いアップルが鈴なりになっていて
果実同士の間隔をあけるために、小さいものをことごとくもぎ落としていく。
だいたい4-5コのうち1コを残すくらい大胆にやるとちょうどよく、
感覚的にはほとんどの実を落としているような気さえしてしまう。

農場内はこれまたケミカル満載のトラックがイケナイ霧をまき散らしながら走り、
そのトラックをしり目に、タスマニアと言えども真夏の太陽のもとで8時間単純作業を繰り返す。
ノリのいい音楽をガンガンかけて、やっとこなせる作業だ。
頑張れば日給1万円に達するとはいえ、こいつはけっこうしんどい。

apple thinning
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ただ、こうして”外国人季節労働者”の視点で、1つの作物を(ほぼ)1年を通してみてみることで、
初めて気づき、理解できたこともある。

何気なくスーパーに並んでいるアップルというのは、
いったいどれだけ農薬を浴びて、どれだけ間引かれたあとの果実なのか。
そしてどれだけ安い労働力に支えられて、スーパーの商品棚に書かれる値段が決まるのか――。
こういう視点を体得できたのは、今年の一つの”成果”と言っていいのかもしれない。

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ここのアップルファームは丘の上にあって山々に囲まれた入り江が見渡せる。

日没の時刻、20時ごろに眺めるそうした景色は、
”静寂”という形容がぴったりの絵葉書の中の世界と言っていい。
あくまで太陽は優しく、森は穏やかで、海は波ひとつなく凪いでいる。
そんな景色を一日の終わりに眺める――そんな生活も、決して悪いもんじゃない。

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2 Responses to アップルの間引きをしています

  1. maya のコメント:

    こんばんは。

    いよいよ年の瀬ですね。寒さも本番です。
    ウチの実家は長野県ですが、周りはリンゴ畑多いです。高齢者に偏った農家さんが、葉巻型宇宙船の様な形状の農薬噴霧機に乗って散布しているのを良く見ます。

    出来のよいキレイなものは都市部へ出され、発色や形が悪いものは地元で消費される。当たり前のように繰り返されるサイクル。仕事がら農産物や農薬関連の話を伺う機会もありますが、薬剤は日進月歩。見えない部分では新しい要素が増えてきます。
    世代を超えたゆくゆくの影響などはチョット心配でもあります。

    「成果」まさしく、果実が成ると書きますね。
    果実が成るまでの永い工程と多くのステップが「成果」と通ずるものを感じました。

    • chirujirou のコメント:

      >mayaさん
      いよいよ大晦日、
      ほとんどhappy new yearと言っていいような残り時間にもなってきました
      いかがお過ごしでしょうか。

      mayaさんは長野ご出身なのですね。
      タスマニアもアップルアイランドという別名があるくらいの世界的に有名なアップルの産地です(地図で確認するとタスマニア島自体アップルのカタチをしています:>)
      しかし地元のフレッシュマーケットに並ぶのは小さなリンゴの袋詰めばかり、産地というのはこういうものでしょうか・

      >「成果」まさしく、果実が成ると書きますね。
      まさしくそうですね^^;  これまでの季節労働を振り返って考えてみると、果実を得るというのは、たくさんの人の協力があってこそなのだと心底思います。いい言葉ですね。
      それでは、よいお年を!!
      来年はいよいよちゃんとサイクリングしますので、また見に来てくださいね笑

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