大草原の夕立がくれたシャワー

やはりはげしい雨になった。
待ってましたと、勢いよくテントの入り口をあけて外にでる。
衣服は身に着けていない。心配ない、ここは平原のど真ん中、どうせ誰もいやしない。
夕闇がせまる中、大粒の雨が体に弾けてバチバチと音を立てている。
両手を広げて天を仰ぐ。今日の汗が流れてゆく。
「なんて気持ちのいいシャワーだ――」
“ナラボー平原越え”の終盤、それは大自然が最後にくれた粋な計らいだった。

遠く夕立が見えたのは16:30ごろ、ハイウェイ沿いの木々がまばらに生える空き地にテントを張り終えてしばらくたったころだ。それほど遠くない空の向こうに雨の帯がみえ、雷も光っている。どうやら風向きからしてこっちに来そうだ。

「・・シャワーが浴びれるじゃないか!!」
自分でもおかしいのだけれどとっさに思ったのはそれだった。”ナラボー越え”の終盤とはいえ自転車の総重量はまだ50キロはある。100キロオーバーの走行が連日続き、シャワーなしのキャンプではつらい夜になりそうだった。夕立だろうがなんだろうが汗を流せるのは大歓迎だったのだ。

ところが、予想は外れてしまった。やってきたのは突風と砂嵐だったからだ。
雨雲本体を取り巻いている強風が、カラカラの砂を巻きあげたのだ。あたりはあっという間に「一寸先は砂嵐」。まるで予想外だったからテント内にも砂が舞い込み、整頓していたはずの内部はまるで廃墟のようだ。しかしやがて雷鳴とともに待望の大雨となった。砂の嵐は押さえつけられ地面に戻り、本当の嵐が轟音とともにあたりを取り巻くのだった。

雷鳴と雨粒が地面をたたく音につつまれ天然のシャワーを浴びる。
周囲はいまだ砂のにおいがたち込めている。
夕闇の中で、うなり狂った風のつよさ、滝のような勢いの雨粒のつめたさ、そんなのを感じながら天を仰ぎみる――、それはクライマックスにふさわしい、五感の冴えわたる瞬間だった。

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